新刊トリケラトプスNo.9 3月12日掲載分

(1)粂太郎、奔る 秋月こお 著/小学館パレット文庫/鈴木 輝一郎選
(2)双子幻綺行 森福 都著/祥伝社/末國 善己 選
(3)風譚義経 古田十駕著 /文藝春秋/神田 紅

新人とは思えぬ重厚な叙述

歴史上の有名人物を、作者が資料を読み解き、史実を曲げない程度の
フィクションを付け加え、面白く小説化していただくと、勉強と娯楽の
一石二鳥になってありがたい。

風譚義経」はそんな大作で、日本人が大好きな義経伝だが、弁慶と義経の五条の大橋の出会いも安宅の関も登場しない。静との関係も淡々としている。
それでいて、平家滅亡から義経の平泉落ちのラストまでしっかり引っ張っていくのは作家の技量だ。新人作家と聞いて驚いた。特に鳥辺野で弁慶が赤ん坊を連れた女を拾う冒頭がいい。この赤ん坊・阿古丸が義経の影となり、難しくなりがちな物語の調味料役を務めている。主人公を義経一人に絞り込まなかったための目まぐるしさはあるが、将来性十分と見て満点にした。
 紅評点 3.0トリケラ


双子幻綺行」は、中国版宮部みゆき風推理傑作集。七話の事件を双子の兄妹がオシャレに解き明かしてゆく。舞台が洛陽、時代は周、帝は則天武后で、九郎は宦官という設定が、独特の雰囲気を醸し出している。七話はそれぞれ一話完結だが関連性もあり、兄妹の運命の変遷にもつながっていく。登場人物も生き生き描かれていて、とにかくうまい作家だ。 上記風譚義経」とは比較しにくいが、大作ではないとして点差にした。 紅評点 2.5トリケラ


粂太郎、奔る」は、講談風でリズミカル。読みやすさは大いに買う。作者自身が娯楽小説と書いているように、電車の中でも軽く読める、しゃべるるような物語。
粂太郎の啖呵でストレス発散というところか。
紅評点 2.0トリケラ