新刊トリケラトプスNo.8 1月29日掲載分


(1)魔風海峡 荒山 徹 著/祥伝社/末國 善己 選
(2)清盛 三田誠広 著/集英社/神田 紅 選
(3)紫式部物語上・下 ライザ・ダルビー著 /岡田好恵訳
    /光文社 鈴木 輝一郎選


父との確執軸に描く清盛

今回は甲乙つけがたい大作ぞろい。個人的興味と読破に要した時間において、僅差であったことを強調したい。
紫式部物語」は、かの『源氏物語』の作者紫式部の生涯の物語。これまで式部といえば、どこか分別臭い暗いイメージだったが、この作品では一貫して明るくエネルギッシュだ。越前での結ばれぬ恋や、宇治十帖の後に「失われた終章」を付け加えるなど、大胆な想像力で式部の日常を描く。外国人作家だからこそできた創作か。源氏物語はこんな風に書かれていったのかと納得。恋や仕事に傷つきながらもたくましく生きる式部の姿にドキドキわくわく。
紅評点 3.0トリケラ

清盛」は、表紙の裏の家系図を何度も見ながら読み進む。こちらも今までの高慢な清盛像とかなり違っていた。時代の流れの中で押し出されるように平家の頭領になる清盛は、平忠盛と白河院の二人の父を持ち、出生の秘密の中で父親の愛に飢えて育つ。「父親との確執」を物語の骨子に据えたあたりはさすがの筋立て。それでグッと読みやすくなっている。武士台頭の時代背景が良く分かった。
紅評点 2.5トリケラ

魔風海峡」は、新人作家と聞いてびっくり。構想も面白く文体もリズミカルだ。任那に隠された黄金をめぐって真田の忍びと高麗忍びが戦う。死者を生き返らせる術などは、あのゾンビを思い浮かべた。韓国に留学経験を持つ作者ならではの世界。朝鮮半島の地名や人名のとっつきにくさが点差になったが、力量は十分。
  紅評点 2.0トリケラ