新刊トリケラトプスNo.7 12月11日掲載分


(1)バラガキ   中場利一 著 講談社 鈴木 輝一郎 選
(2)血の城  鈴木英治 著 角川春樹事務所 末國 善己 選
(3)影流暗殺刀薩摩刺客 永井義男 著 光文社 神田 紅 選



十年後には少年は剣の達人に

作家の文体に慣れるまでには、最初の何ページかを熟読する。
慣れてしまうと、イッキに読める本と、そうでもない本がある。
これが相性というものだろう。
血の城」は最初、瀬兵衛という無名の登場人物や、切れ切れに表現される場面の目まぐるしさにとまどったが、そのうち高天神城を取り囲む戦国武将の姿が見え始め、アッという間にラストまで読み進んだ。
竹田の忍び対今川の忍の壮絶な戦い、良養丸という薬の謎、高天神城を最後の砦とした武田家の命運等々、映画を見ているように楽しめた。
新鋭と知ってびっくり。
最後紅評点 3.0トリケラ


影流暗殺刀薩摩刺客」は、自分の推薦だけに読みやすかった。薩摩藩のある事件で、遠島になった武士の子供が十年間も屋敷に立てこもり、出てきたときには容貌魁偉な青年になっているという奇想天外な始まり。
現代の「ひきこもり」とは違い、その子は父から受け継いだ影流の達人に成長していた。俗世を離れた若者の浦島太郎のような戸惑いが面白い。
中には幕府の隠密が講釈師になって薩摩藩をさぐるところがあるが、いい味付けになっている(手前みそ)。 
紅評点 2.5トリケラ


バラガキ」は、土方歳三を中心にした新撰組の世界を現代語で描いている。バラガキとは武州でイバラのようなトゲを持ったガキのことで、それが土方。芹沢の暗殺や池田屋までの出来事を不良のケンカのように軽妙に書いている。私には文体がなかなか入ってこなかったが、逆にこれでなくちゃというファンも多いはず。  紅評点 2.0トリケラ