新刊トリケラトプスNo.5 9月25日掲載分


(1)かぐや姫草紙   六道 慧 著  桜桃書房 神田 紅 選
(2)歴史小説の懐  山室恭子 著 朝日新聞社 鈴木 輝一郎選
(3)明治九年の謀略 舞岡 淳 著  光文社 末國 善己 選

『竹取』の巫女に呪術からめ

かぐや姫草紙」は、藤原鎌足の長男定恵(じょうえ)が毒殺されたところから劇的に始まる。主人公は役小角(えんの おづぬ)。
呪術を使う小角の治める葛木山中で『魂送りの儀」を行っているのは、盲目の美少女迦具夜(かぐや)姫。彼女は竹取一族の巫女だ。あの「竹取物語」と役小角をかごめ紋で結び合わせ迦具夜姫に魅せられた藤原不比等と役小角との三角関係を、天武天皇の時代を背景にミステリアスに描いていく。霊能力の戦いや迦具夜姫の恋心など女性好みの世界かもしれないが、リズミカルな文体や要所要所の古語の説明に納得しながらイッキに楽しく読ませてもらった。私好み。
 紅評点 3.0トリケラ


明治九年の謀略」は、よく練り上げられ構築された長編の明治モノであることは確か。会津藩士神保新十郎という無名の武士の波乱に富んだ人生を主軸にして、初代警視総監川路利良や勝海舟の物語をからめ、各章ごとに視点を変えて「明治」というエネルギーに満ちた時代を浮き上がらせる。ジグソーパズルをはめ込んでいくように、各章を読み進められるのは面白いが、盛りだくさんすぎる感じも少々。 
              
紅評点 2.5トリケラ


歴史小説の懐」は、歴史小説の評論はこんな風に書けたらと思わせる名文の評論集だ。女性らしからぬキッパリとした切り口で、時代設定や舞台背景の矛盾点や疑問点を突く。「懐」の深さは、彼女の読書良の凄さから来るものだろう。『大菩薩峠』や『御宿かわせみ』などの名作を、何だか読んだ気になった。     紅評点 2.5トリケラ