新刊トリケラトプスNo.4 8月7日掲載分


(1)陣借り平助  宮本昌孝著   祥伝社    末國 善己 選
(2)天保の雪   市原麻里子著  新人物往来社 神田 紅 選
(3)楠木正成   北方健三著   中央公論新社 鈴木 輝一郎選


雪の結晶に魅せられた殿様

夏の蒸し暑い夜には、出来るだけ長編ではない本を読みたいものだ。

陣借り平助」は、文章にリズムがあって、まるで紅談でも聞いているような心地よさがある。人呼んで陣借り平助と言われる放蕩無頼の巨漢が、愛馬丹楓と共に戦国武将の陣を借りて、劣勢だった闘いに勝ちをもたらしていくという娯楽性あふれる物語。
最後の平助の出生の秘密の展開には、少々違和感を覚えたが、狂言まわしの平助の目を通して、信長や家康などのお馴染の武将の姿や有名な闘いが、まるで「見て来たように」描かれている。
 
           
紅評点 2.5トリケラ


天保の雪」は、雪の結晶「雪華」に魅せられた古河藩主土井利位と、それを教えた家老鷹見忠常が「続雪華図説」を著すまでの短編小説。美しい雪華と、「蛮社の獄」や大塩の乱」などの暗い時代背景が対照的に語られるところはお見事。「雪華図」と言う意外な目のつけ所が評価されて歴史文学賞を受賞している。他に月や飛行機などを題材に書かれた四編もあり、女性らしからぬ「理科系」の世界に私は興味を持ったが、「それでどうした?」と言いたくなる結末は作者の狙いか。
           
紅評点 2.5トリケラ


楠木正成」は、作者のお得意分野の南北朝物語。楠木は知略の将として知られているが、自ら「悪党」と名乗る楠木のリーダーとしての渾沌とした迷いが、十分に語り尽くされている。千早城籠城で燃え尽きた感のある楠木、 私もこの辺で休みたくなった。   
           
紅評点 2.0トリケラ