新刊トリケラトプスNo.3 7月3日掲載分


(1)夢売り童子陰陽譚    日向真幸来著 文芸春秋 鈴木 輝一郎 選
(2)カルチェ・ラタン     佐藤賢一著 集英社  末國 善己選
(3)小説 立花宗茂 上・下  童門冬二著 學陽書房 神田 紅 選


倒産大名が歩んだ再生の道

水郷として有名な福岡・柳川に「お花」と呼ばれる名所がある。凝った造りの庭や洋館は立花家の別荘で「小説 立花宗茂」は、その初代宗茂の物語。
関ヶ原の戦いは、戦国大名に様々な人生模様をもたらした。秀吉に恩を感じて西軍に付いた宗茂は敗戦の将となって領土を失うが、後に徳川秀忠に気に入られ再び柳河〔旧)城主に返り咲く。自社「立花」を倒産させた社長宗茂が、リストラ社員をどうとりまとめて再生の道を歩むか。知識として宗茂を知る最良のテキストだ。
    紅評点 2.5トリケラ


夢売り童子 陰陽譚 」は、コミックを文章で読んでいるような独特な文体で、「源氏物語」の光源氏を思わせる平安末期の青年陰陽師橘次〔きちじ)の妖かしの摩訶不思議な世界が展開される。占い、呪い、死後の世界など今の子供たちが好みそうなオドロモノだが、古典の知識も豊富な作者の筆力の呪縛か、結構はまってしまう。 紅評点 2.5トリケラ


カルチェ・ラタン」は、推薦してもらわなかったら決して手に取ることはなかったであろう「大作」だ。それは翻訳物が苦手だという理由によるが、おかげでパリ・セーヌ河左岸の学生街をカルチェ・ラタンということや、プロテスタント台頭当時のパリの人々の生活模様を垣間見ることが出来た。 宗教や主義などの問題は難解だったが、作者ドニ・クルパンが数々の事件を通して「男」になっていく成長物語としてなら興味深い。今回は三作とも全く肌合いが違う作品だったため、迷ったあげくの同点。
                  
 紅評点 2.5トリケラ