新刊トリケラトプスNo.17 2月25日掲載分 最終回!


(1)逆説の日本史9 井沢元彦 著/小学館/神田 紅 選  紅評点 3.0トリケラ

 琉球王国の興亡から貿易立国の背景、倭寇の正体、鉄砲伝来の本当の目的などの謎解きを経て、戦国武将の思想までを流暢に説く。現代も視野に入れた「大人向き歴史教科書」9作目

戦国野望編
菊地秀行著/角川書店/鈴木 輝一郎選 紅評点 3.0トリケラ

 江戸期を舞台にしたホラー短編集。男の弱さにつけ込んで、家々を渡り歩く母子を描いた「子預け」、正体不明の奉公人にまつわる「茂助に関わる談合」などのショートショートは必見。

(2)幽剣抄
山本一力 著/祥伝社/末國 善己 選  紅評点 3.0トリケラ

博徒・猪之介に借金を返すまで大川を渡ることを禁止された銀次は、周囲の勧めもあり、呉服屋で手代として働き始める。だが、その裏では、銀次を陥れる陰謀が静かに進行していた。

(3)大川わたり

歴史のつながりを実感する楽しみ

 「逆説の日本史9-戦国野望編」は、史料絶対主義の歴史学者の物申す的な逆説シリーズ。雑誌の連載をまとめたもので、独自の解釈がいつもながら楽しく、納得させられた。琉球の歴史から戦国武将まで、一見脈絡なさそうだに思えるのだが、歴史は繋がっているのだと痛感。要所要所に問題提起をし、読者に考えてもらおうという試みが快い寄り道になって、興味が持続する。作者自身が指摘する、くどい繰り返しも理解を促す方法として効果的だ。こんな歴史教科書だったら、学生時代にもっと歴史を推理して覚えただろう。
 「大川わたり」は、時代小説らしい男の人情話。不景気な昨今、こんな粋な話で心だけでも暖まりたいものだ。主人公銀次は、賭場の借金で将来もない身の上。それが一念発起して奉公に励み、周りの人たちの助けで人生を取り戻していく。男社会の執拗な嫉妬や意外な人物の素性など、人物描写や展開の巧さだろう、素直に感動の涙がこぼれた。
 江戸の庶民を、淡々と切々と描いた「大川わたり」に対し、幽剣抄」は、独特の怪奇の世界。摩訶不思議な妖しの物語が、長短入り交じって9編収められている。圧巻は「這いずり」。霊になって這いずりの姿で現れる下級武士のなれの果ては、気味が悪くて哀れ。また敵を討ってほしくて姿を現す「影女房」の女幽霊は、コケティッシュで可愛い。不可思議で解決のつかない結末だが、ホラー作家なではの手法で、幽玄な絵画を見ているような冴え冴えとした気分になった。