新刊トリケラトプスNo.16 12月17日掲載分


(1)坊ちゃん忍者
   幕末見聞録
奥泉 光 著/中央公論新社/末國 善己 選  紅評点 2.5トリケラ

養子先で忍者修業をしていた「おれ」は、尊王思想にかぶれた幼なじみと2人で、動乱の京へ行く羽目に。幕末を生きた若者たちを、漱石
『坊ちゃん』のパロディとして描く異色作。

童門 冬二著/PHP研究所/神田 紅 選 紅評点 2.5トリケラ

徳川家康の重臣本多作左衛門は鬼作左と呼ばれ、民には慕われていたが忠義一途の頑固者のために、次第に家康に疎まれていく。経営者としての戦国武将たちの、かけひきや人心掌握術などを説く。

(2)鬼作左
佐伯泰英 著/光文社時代小説文庫/鈴木 輝一郎選  
                 
紅評点 3.0トリケラ

江戸市中に、国定忠次が押し込み強盗を働くという。偽物と看破した始末人・夏目影次郎は、上州に向かう。そこで忠治が幕府目付・鳥居耀蔵に謀られているのを知った。

(3)妖怪狩り

使われる側も必読「組織論」

妖怪狩り」はこのシリーズの主人公夏目影次郎のキャラクターが魅力的。人を殺し島流しになるところを、父親の裁量で始末屋という影の仕事につく。法城寺佐常を腰に落としざして、南蛮外套を肩に一文字笠をかぶると、ニヒルで物静かなヒーローが現れる。今回の事件の容疑者・国定忠次にはなかなか出会えないが、途中道連れになる女おたきとの旅もミステリアス。一緒に南山御蔵入という上州から会津若松へ抜ける街道の謎に踏み込み、山の中ならではの起伏に富んだ冒険活劇を楽しませてもらった。蛮社の獄を背景に、妖怪・鳥居耀蔵との対決がこれまた痛快。
坊ちゃん忍者幕末見聞録」は、抱腹絶倒の青春見聞録。霞流忍術を養父に教え込まれた松吉が、さほど親しくもなかった同い年のお坊ちゃん寅太郎と、故郷出羽から京の都へ。寅太郎は攘夷の志を持っているというのだが、じつはいい加減なやつ。他に堅物の平六やおかしな貧乏人・苺田氏も加わって、新撰組とのからみが展開される。松吉が下手な忍術を駆使しするところでは、大声で笑ってしまった。一人称日記形式。ほのぼのとした読後感が良い。
鬼作左」というタイトルが興味をひく。鬼と言われた作左衛門が、忠臣でありすぎたための悲哀を中心に、戦国武将の経営戦略も平易な文章で語られる。信長、秀吉、家康の様々なエピソードも網羅。使う人も、使われる人も、参考になるはず。