新刊トリケラトプスNo.15 11月12日掲載分

(1)明治必殺 楠木誠一郎 著/祥伝社/鈴木 輝一郎選  紅評点 2.5トリケラ

明治を舞台にしたチャンバラ小説。元長州藩士鯨源九郎が主人公。
「闇の頭」の指令のもと、3人の仲間とともに依頼を受けて悪を始末する。本書での標的は、内務卿大久保利通。

佐藤雅美著/文藝春秋/末國 善己 選 紅評点 2.5トリケラ

日本左衛門の二代目を名乗る怪盗が現れた。八州廻りの桑山十兵衛は、犯罪者の護送費用軽減のための組合村構想や、目の前の事件に追われながらも、日本左衛門の捕縛に乗り出す。

(2)劇盗二代目
   日本左衛門
諸田玲子著/講談社/神田 紅 選  紅評点 2.5トリケラ

清水次郎長の第一の子分大政こと政五郎は、囚人を使って富士のすそ野の開墾を任される。弟分の相撲常と、侠客ならではの仕切りをするが時代の変遷の中、困難を極めた。その悲哀を描く。

(3)笠雲

女性にも光を当てた次郎長もの

次郎長ものは男の世界なのでどうも敬遠しがちだが、『月を吐く』で俄然、注目されした筆者の
笠雲」は大政を取り巻く女達にも焦点を当てていて、取っつきやすい。時代の変化に迎合する次郎長についていけない大政の苦悩は、リストラにあえぐ現代の中高年サラリーマンの姿にダブって見えた。彼を支える女房のおやす、次郎長に恨みを抱く茶屋の後妻おじゅうの女の資質の対比や、弟分の相撲常の純情などを伏線に、大政が困難な仕事をやり抜けるかどうか、期待を盛り上げて結末まで一気に引っ張っていく。
劇盗二代目日本左衛門」は、捕物帳のトリックのうまさと、直木賞作家ならではの文章力にうなった。二年間に渡って連載された八作品が、それぞれ一話完結ではあるが、犯人のモンタージュを少しずつ描き出していくように、次第に劇盗二代目日本左衛門の実像を浮かび上がらせる。三十人の賊が鮮やかに姿を消す不思議は十分に興味深かったが、最後の犯人との対決が少々あっ家泣く、そっくり大名のからみや再登場を期待してしまった。
明治必殺」は、のっけから始まる男女の情交シーンに驚いた。しかし事件は明治の一大事件、大久保利通暗殺。アウトローなヒーロー鯨源九郎が、必殺仕置き人的グループとともに歴史の裏側に暗躍する。手首や首が飛び、爆裂弾が破裂する派手な格闘シーンがあるかと思えば仲間の友情もある。とにかく飽きさせない、娯楽で読ませる明治活劇だ。