講談界の猿之助が見たスーパー歌舞伎
唄ったり踊ったりの講談を演じるところから、私は"自称講談界の猿之助"と、時々言わせてもらっている。歌舞伎役者の中で一番好きなのは、やっぱり市川猿之助丈だ(落語は師匠、講談・浪曲は先生、歌舞伎は丈という)。そもそも私が猿之助ファンになったきっかけは、20代の時に見に行った舞台「黒塚」だ。老女が人間に戻れる嬉しさに踊るあの"月の踊り"の素晴らしさに、まだ人生の機微など解からぬ私だったが、なぜか涙が流れて仕方がなかった。依頼ファンとなり、後援会「おもだか会」に入会したのだが、3階席専門で「おもだか会ニュース」を読むだけの貧しい会員だった。
それが4年前、ついに、猿之助丈とお会いするチャンスが巡ってきたのだ。所は東京銀座松坂屋デパート7階。東京新聞主催の「スーパー歌舞伎展」でのこと。私はそこでトークショーの司会と、講談「猿之助物語」を語らせてもらった。その5日目のこと、猿之助丈が歌舞伎座の公演の合間にフラリと会場を訪れたのだ。喫茶店で歓談させていただいくラッキーに加え、図々しく「今日のトークは八犬伝の作者の横内謙介さんなんですけど、ひょっとして、澤瀉屋さんが飛び入りして下さるなんて・・・・無理ですよね」とお願いしてみた。すると「いいですよ」とアッサリ。そんな気さくなお人柄と、20世紀歌舞伎組の若者達を門閥を超えて登用し続ける勇気、そして何より「歌舞伎」を心から愛していらっしゃる姿に感動させられる。

「ヤマトタケル」の天翔ける心で新しい歌舞伎に挑戦し、「リューオー」では、京劇との混合で国際交流を。「オグリ」のように、歌舞伎のロマンにとりつかれ、「八犬伝」では、これからを担う若者達を育て上げ、「カグヤ」のように想いは宇宙にまで拡がって、「オオクニヌシ」の持つ美しい魂で、人間の本質を問い続けていく・・・・。オオクニヌシのラスト、孫のコナムチに「高い志」を説く場面では、会場にすすり泣きが溢れていた。